レコードブームの今。あの頃へタイムトラベル
昭和生まれの私たちにとって懐かしい「レコードブーム」が数年前からきているのをご存知ですか?
シングル盤は中央に大きく穴が開いていたので、ドーナツ盤とも呼ばれていました。ブーム到来をご存知でない方にとっては、ちょっと不思議な感覚になるかもしれませんね。
思い出してみてください、お目当てのアーティストの新譜発売を知ると急いでレコード屋さんに予約を入れませんでしたか?予約限定でポスターやグッズをもらえるのが嬉しかったものです。発売当日になるとお金を握りしめ、レコード屋さんに駆けつけました。
そう、私たちの青春には、いつもレコードから流れる音楽がありました。さぁ、レコードブームにのって、懐かしいあの頃へタイムトラベルしてみましょう。
レコードに針を落とす緊張感も懐かしい
プレーヤーにレコードをセットして、針を持ち上げるとレコードがスルスル回り始め、そこに針を落とすあの緊張感といったら、(わかるわかる!)と大いにうなずいている皆さんの笑顔が想像できます。
うっかり手元が狂い、針が滑ってレコードにうっすらと傷がついた時のショック。ヤキモキしながらもう一度、気を引き締めて針を落とし、音楽が流れ、(この辺で音が飛ばなければ大丈夫)と確認し、胸をなで下ろした経験のある方はたくさんいらっしゃるのでは。また、レコードに埃があると針が飛んだり、傷の原因にもなるので、クリーナーでレコードの埃や指紋などの汚れをていねいに落とすのも大切な儀式でした。いま思えば、かなり手間のかかる作業ですが、スピーカーから音楽が流れると大好きな歌の世界へひとっ飛び。至福の時間でした。
こうしてレコード鑑賞を楽しんでいるなか、音楽好きな親戚の叔父さんや、テレビで著名人が「すり減るほどレコードを聴く」などと言っているのを聞くと、レコードは溝がすり減って聴けなくなるのかとドキッとしました。レコードの溝をダイヤモンド針で摩擦するわけですから、物理的にすり減る現象は考えられますが、一般的に趣味としてレコードを楽しんでいるぶんには、そこまでいくことはなかなか無いようです。つまり「すり減るほどレコードを聴く」とは、たくさんそのレコードに針を落とし、のめり込むほど音楽を聴いて楽しんでいるよ、の比喩だったようですね。
「レコードは音が良い」とは?
レコードで音楽を聴いていた私たちも、楽しみ方は大きく様変わりしました。名前のとおりコンパクトなサイズで登場したCDは、クリアな音で聴けると評判で(正直を言うと、レコードとの違いがよくわかりませんでした)、ポータブルCDプレーヤーにその日聴きたいCDをセットして外出している人もいましたね。そしてさらにコンパクトなMDや膨大な曲数を楽しめるmp3でカルチャーショックを受け、今なら配信ダウンロードやサブスクリプションで音楽を楽しんでいる方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
しかし長年愛用してきた生粋のレコードマニアにとって、レコードには「音の良さ」があるといいます。一般的に人の耳に聞こえる周波数の範囲は、低い音で20ヘルツから高い音で20,000ヘルツくらいまでの間で、これを可聴域といいます。CDは可聴域に合わせてデジタル処理して作られる一方、レコードは20,000ヘルツ以上の高周波数領域の音も記録するため、「音の響きが柔らかくて良い」といわれたり、「バンドがすぐそばで演奏しているみたい」という声もあるのです。
実は現在のレコードブームを牽引しているのは、デジタル音源で育った若い世代といわれ、彼らの耳にレコードから聴こえる音は、新しい出会いのように新鮮なのかもしれませんね。若い世代の人たちがレコードを聴くようになったきっかけとして、世界同時開催で行われるレコードの祭典「RECORD STORE DAY(レコード・ストア・デイ)」というイベントや、人気アーティストたちが近年、CDと同時にレコードをリリースしているのもレコードブームの後押しをしているようです。
ピークは「青い珊瑚礁」が流れていた頃
1,812億3,800万円。これはレコードの年間生産額が一番高かった1980年の数字です。今から44年前、皆さんはどんな青春を送っていましたか? “1980年ヒット曲”でネット検索すると懐かしい曲がたくさん出てきます。邦楽では「青い珊瑚礁」「異邦人」「ダンシング・オールナイト」など、洋楽ではノーランズ「ダンシング・シスター」、マイケルジャクソン「ロック・ウィズ・ユー」など懐かしい。題名を聞いただけで当時の空気感がよみがえってくるようです。好きな曲をすべてレコードで買うわけにはいかないので、テレビから流れてくる音源をカセットテープに録音をしたり。笑い話ですが、録音している時に家族の声が入ってしまったり、リリーンと大きな音で黒電話が鳴るとがっかりしたものです。
さて、レコードの年間生産額は1980年の1,812億3,800万円をピークに、30年後の2010年は最も少なく、1億7000万円でした。そして徐々に盛り返し、2015年は一桁増えて11億7500万円、2023年は62億6700万円まで復活しています(出典:日本レコード協会)。今後、どんな変化が起きていくのでしょうね。
画期的だったレンタルレコード屋さん
皆さんは初めて買ったレコードを覚えていますか? (私は山口百恵さんの「イミテーションゴールド」でした)あの頃、シングルレコードは1枚500円前後で、LPレコードは2,800円くらい。シングルレコードはA面1曲、B面1曲。LPレコードは「アルバム」ともいわれ、A面B面と合わせてだいたい10〜12曲くらい入っていました。
どう考えてもLPレコードの方がお得ですが、そう簡単に買える金額ではなかったところに、レンタルレコード屋さんの登場です。聴きたかったLPレコードが1枚300円くらいでレンタルできるのですから、これは画期的でした。ただし、レコード発売日から数週間待たなくてはならず、洋盤になると1年くらい待ちました。レンタルレコード屋さんで待望のレコードを借りたら、収録時間に合ったカセットテープを用意して録音をしましたよね。
録音をしながら、カセットテープのインデックスカードにアルバムのタイトルと曲目リストをていねいに書いたものです。音楽系雑誌には、カセットケースにピッタリ入るサイズのアーティストの写真もありました。また、ダブルカセットデッキを酷使して好きな曲を集めたオリジナルコレクションのテープを作っている人もかなりいました。懐かしいですね!
ジャケットやライナーノーツの楽しみ
ジャケ買いという言葉がありますが、おしゃれなレコードジャケットが多くあり、インテリアとして飾っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ファッションに流行があるように、デザインにも流行があり、その時代に人気のあった書体や文字組などが反映されているものもありました。
また、歌詞やその歌に関する解説をまとめた小冊子、ライナーノーツは読み応えのあるものが多くあり、この歌にはそんな思いが込められているのかと感動しながら読み耽ったものです。また、ライナーノーツだけでしか見られないアーティストの写真もありました。そこへいくと配信ダウンロードやサブスクリプションには、そうした楽しみが無いのかもしれませんが、膨大な数の楽曲をパソコン、スマホなどデバイスを選ばず、いつでもどこでも気軽に楽しめるのが最大のメリットですよね。しかも懐かしいメロディに再会できる喜びも。私ごとで恐縮ですが、子どもの頃、ちあきなおみさんの「喝采」が大好きでお風呂に入りながらよく歌っていました。今年6月頃にサブスク解禁の記事を見た時は本気で嬉しかったです。
あれこれと思い出は尽きませんが、今回のコラムで懐かしの音楽をレコードで聴きたくなったら、レコードを聴ける喫茶店やバー、中古レコード屋さんなど検索してみてはいかがでしょう。案外近くにあるかもしれません。
また、YouTubeで検索するとレコード再生の音楽を聴けるので、秋の夜長は思い思いの「あの頃」に戻って、音楽の世界に浸ってみませんか。






